大阪大学21世紀COEプログラム 究極と統合の新しい基礎科学 実績報告書

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はじめに−5年間の教育・研究活動−

はじめに−5年間の教育・研究活動−

拠点リーダー  大貫  惇睦 (物理学専攻)

拠点リーダー  大貫  惇睦 (物理学専攻)写真

 21世紀COE プログラム「究極と統合の新しい基礎科学」が平成15年に採択され、平成19年度までの5年間にわたって総額717,540千円の直接経費の財政的援助を文部科学省から受けた。この補助金を基にして、将来を担う大学院学生・若手研究者の育成を主眼にして様々な教育・研究活動を実施した。本COE プログラムの対象は、大学院学生の在籍をもとにすると、理学研究科物理学専攻、宇宙地球科学専攻、数学専攻と情報科学研究科情報基礎数学専攻及び基礎工学研究科システム創成専攻である。また、その大学院学生を受け入れている教員は、上記以外に核物理研究センター、レーザーエネルギー学研究センター、極限量子科学研究センターに属している。大学院生の総数は博士後期課程で約150人である。事業推進担当者は約25人であるが、大学院学生・若手研究者を通した教育・研究活動のため、上記の全ての専攻・センターの教員が本COE プログラムに参加した。

 本拠点の学問分野は微視的な素粒子の世界から、物質・化合物、地球・惑星、そして広大な宇宙に及んでいる。基礎科学の発展は、「更に深く」究極世界を探る縦糸と、「更に広く」統合を求める横糸の織りなす芸術作品とも言える。「更に深く究極を探求する」とは普遍的な法則・原理の探求であり、「更に広く統合する」とは多様性の追求である。普遍的な法則は様々な局面に多様な姿を表し、多様な現象の背後にはしばしば普遍的な法則が潜んでいる。普遍性と多様性が共存する21世紀の新しい基礎科学を生み出すため[1]宇宙基礎物質の研究、[2]物質の創成、[3]原理の探求の3つの研究班を立て、以下のプログラムを実行した。

 まず、大学院学生・若手研究者を主体にして活動は以下の3つである。

  1. 新カリキュラム「現代社会と科学技術」の開講
  2. 若手夏・秋・冬の学校
  3. 国内外での研究成果の発信と海外インターンシップ


 まず、1. の新カリキュラムの教育活動の内容は、大阪大学出版会から「現代社会と科学技術」と題し、平成20年3月に刊行された。

 2. の若手夏・秋・冬の学校は、大学院学生・若手研究者の研究発表能力を高め、自立する研究者の育成を目的として、自らが計画・立案して毎年開催した。特に本COE プログラムで雇用された若手研究者とRA による研究支援をした大学院学生が中心となった。100〜200人規模の参加者による2泊3日の夏・秋・冬の学校を運営する能力は、年毎に上達し、事業推進担当者以上の実力を持つに至っている。これは本COE プログラムの大きな成果の一つと言えよう。発表内容は冊子体としてまとめ、参加者と教員に配布した。

 次に3. に関してであるが、大学院学生・若手研究者の研究活動の成果は国内外での研究会・学会・国際会議等に参加してその研究成果を発信した。また海外インターンシップに関しては、大学院学生・若手研究者が取り組んでいる研究の発展のための海外共同研究やその研究成果を世界に発信することが中心であるが、海外の教授陣に触れて新しい知識を吸収することにも行われてきた。これらの活動は冊子体として毎年まとめ教員等に配布した。
 次は、事業推進担当者が中心となり、大学院学生・若手研究者・教員を対象とした研究活動である。

  1. 21世紀COE セミナー・レクチャー
  2. 21世紀COE 研究会
  3. 21世紀COE 国際ワークショップ
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 この中で、「究極と統合の新しい基礎科学の最前線」「素粒子論と幾何学の最前線」「多体系・無限系と数学の最前線」などの研究会を開催し、教員の研究交流を活発化させた。また、新たなる研究分野を開拓する連携の意
識を高めるために

  1. X 線天文衛星による宇宙の解明
  2. J-PARC の建設に向けた取り組み
  3. 核物理研究センターを利用した研究
  4. 極限科学研究センターの超強磁場を利用した磁気科学
  5. 超高圧を利用した新物質創成
  6. 質量分析計の開発とそれを利用した新しい研究分野の展開
  7. 新センター「計算機ナノマテリアルデザイン教育研究センター」の設立と計算物理学の新展開
  8. 金融・保険教育研究センターの設立
  9. 物理学と数学のゆるやかな統合

の研究会を実施した。これらの活動も冊子体にまとめた。

 また、各種の国際会議・ワークショップを開催したが、中でも2005年9月27〜29日にベトナム国立大学ハノイ校の協力を得て、ベトナム・ハノイ市内で「大阪大学・アジア太平洋・ベトナム国立大学ハノイ校フォーラム2005:基礎科学の新展開|新しい物理学・宇宙地球科学・数学を目指して|」を開催した。日本120人、ベトナム170人、その他の諸外国10人、合計300人の参加者があった。大阪大学の支援を受けて、本COE プログラムの拠点リーダーが議長となって、90人の若手研究者(博士後期課程大学院生、助手等)の財政援助を本COEプログラムから行い、若手研究者の研究成果の発信と研究交流を図った。本フォーラムは、ベトナムの3紙の新聞とテレビのニュースでも大きくとり挙げられた。Viet Nam News(2005年9月28日)では、フォーラムに出席したPham Gia Kheim 副首相の講演「……このフォーラムは、基礎科学の分野に新たな研究方策と研究グループを創出させるきっかけになるだろう」と紹介された。両大学の学長・副学長、在ベトナム日本国大使、ベトナム政府側から副首相以外に文部、科学技術大臣等4名も出席された。この国際フォーラムの重要性がうかがえる。フォーラムの内容は、大阪大学出版会から「Frontiers of Basic Science : Towards New Physics - Earth and Space Science - Mathematics」と題し、430頁の本として、平成18年3月に刊行された。

フォーラムの議長・大貫惇睦教授(拠点リーダー)とベトナム国立大学ハノイ校Nguyen Hoang Luong教授の画像 フォーラムのポスターの画像
フォーラムの議長・大貫惇睦教授(拠点リーダー)と
ベトナム国立大学ハノイ校Nguyen Hoang Luong教授
フォーラムのポスター
フォーラム開催初日の大阪大学とベトナム国立大学ハノイ校の
両学長、副学長、在ベトナム日本国大使、ベトナム政府副首相、
文部・科学技術大臣等の主要な方々の画像
フォーラム開催初日の大阪大学とベトナム国立大学ハノイ校の
両学長、副学長、在ベトナム日本国大使、ベトナム政府副首相、
文部・科学技術大臣等の主要な方々


 内外から優秀な若手研究者をCOE 特任助手(助教)、研究員、教務補佐員を招へいし、X線検出技術開発、ミューオン源の試作、新しい磁性体の創出などに関する研究を強化した。また、特色ある研究を活発に展開している博士後期課程の大学院学生をRA として採用した。海外からの留学生をRA として採用したことも特色である。その結果、留学生の数が著しく増大したことが図からうかがえよう。特に事業推進担当者が中心となって、ベトナム国立大学ホーチミンシティ校とハノイ校との交流を深め、大学院学生を受け入れたことが大きな貢献となった。今後もその交流は継続すると期待される。

 以上のような教育研究活動の結果、多数の研究成果が受賞・プレス発表となった。初年度(2003年)の中野貴志核物理研究センター教授の仁科記念賞「レーザー電子ガンマ線による新粒子の発見」や豊田岐聡物理学専攻助手のブルネー賞(国際質量分析学会)「For outstanding contributions to the development of instrumentation for mass spectrometry」を始めとして最終年度の細谷裕物理学専攻教授の仁科記念賞「細谷機構の発見」に至るまで、その間、満渕俊樹数学専攻教授の日本数学会幾何学賞「多様体モデュライに対する小林・ヒッチン対応の汎関数的手法による研究」など多数の際だった成果があった。特に、細谷機構の発見は、まさに本COE プログラムの名称である究極と統合の新しい基礎科学に最もふさわしい内容と成果と言えるだろう。この内容は、特別企画したCOE セミナーをまとめて冊子体とした。

物理学専攻での平成14年度から19年度における留学生の推移グラフ
物理学専攻での平成14年度から19年度における留学生の推移
豊田岐聡助手(写真中央) ブルネー賞受賞の画像
豊田岐聡助手(写真中央)の
ブルネー賞受賞

細谷裕教授の仁科記念賞受賞(2007年12月12日讀賣新聞朝刊より)の画像

細谷裕教授の仁科記念賞受賞
(2007年12月12日讀賣新聞朝刊より)


 5年間にわたる教育・研究活動を以下では数値と名称、あるいは図や写真を挙げて説明する。また、各事業推進担当者の活動もまとめた。今後もこの5年間の連携した研究活動が継続し、発展することをお祈りします。本COE プログラムの活動を支えてくれた事業推進担当者、中でも「宇宙基礎物質の研究」の班長の久野良孝物理学専攻教授と「原理の探求」の班長小谷眞一数学専攻教授には厚く御礼申し上げます。また、新カリキュラム「現代社会と科学技術」を推進していただいた東島清物理学専攻教授に感謝します。また、本COE プログラムの事務を担当した由良利子さんと澤田円さんには、親身を及ばぬご苦労をおかけし、ご協力を得ました。厚く御礼申し上げます。