大阪大学21世紀COEプログラム 究極と統合の新しい基礎科学 実績報告書

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事業推進担当者の活動報告 > 大貫 惇睦 理学研究科物理学専攻・教授
大貫 惇睦 理学研究科物理学専攻・教授 写真

希土類・ウラン・超ウラン化合物における重い電子系の物理

大貫 惇睦  理学研究科物理学専攻・教授

役割/全体の統括

1.研究活動

 希土類化合物に関して約50種類、ウラン・超ウラン化合物に関して日本原子力研究開発機構及び東北大学との協同研究で約20種類の単結晶を育成し、フェルミ面の性質、磁性及び超伝導に関して興味ある物質を開発した。国際会議での招待講演は14件(内基調講演2件)、プレス発表4件、発表論文数は277編であった。

1) ドハース・ファンアルフェン効果による重い電子系の研究

 ネール点がゼロになる量子臨界点で、電子状態がどう変貌するのかを、圧力下ドハース・ファンアルフェン効果により反強磁性体のCeRhIn5とCeIn3で研究を行った。図1は反強磁性体CeRhIn5のフェルミ面の極値断面積に対応する振動数と、サイクロトロン質量の圧力変化を示している。

 臨界圧Pc =2.35GPa で電子状態が4ƒ電子局圧系から4ƒ 電子遍歴系へと1次の相転移を起こしていることを実験的に明らかにした。

  • Recent Advances in the Magnetism and Superconductivity of Heavy Fermion Systems, Y.Ōnuki, R.Settai, K.Sugiyama,T.Takeuchi, T.C.Kobayashi, Y.Haga and E.Yamamoto: J. Phys. Soc. Jpn. 73 (2004) 769-787.
  • A Drastic Change of the Fermi Surface at a Critical Pressure in CeRhIn5 : dHvA Study Under Pressure, H. Shishido, R.Settai, H.Harima and Y.Ōnuki: J.Phys. Soc. Jpn. 74 (2005) 1103-1106. 日本物理学会第13回論文賞
図1 CeRhIn5のシリンダー状フェルミ面の極値断面積に対応する
ドハース・ファンアルフェン振動数とサイクロトロン有効質量の圧力依存性
2)結晶反転対称性の破れた化合物の超伝導

 4種類の化合物(CeNiGe3, Ce2Ni3Ga5, CeIrSi3, UIr)で圧力誘起超伝導を発見した。特にCeIrSi3, UIr あるいはCePt3Si などの結晶に反転対称性のない化合物の超伝導に関して、興味ある超伝導現象を発見した。
 その中で反強磁性体CeIrSi3に圧力を加えると、圧力の増大とともに約2GPa で、ネール点TN→0となり、それとともに超伝導が出現する。2.5GPa 付近で超伝導転移温度TSC =1.6K である。2.65GPa での超伝導の上部臨界磁場HC2の温度依存性を調べたところ、H//[100]では常磁性効果が働きHC2はおさえられて、HC2(0)=95kOe であるが、H//[001]ではその効果が全く効かずむしろ1K 以下でHC2にそり上がりが見え、おそらくHC2(0) =300〜400kOe と極めて大きなHC2である。このようなHC2は強結合超伝導で実現可能であり、事実、比熱測定からこれまでに報告例がないほどの強結合であることが分かった。結晶に反転対称性がないにもかかわらず、H//[001]方向でスピントリプレット超伝導が発現している可能性が大である。この結果は、新しいタイプの超伝導を予想させる。図2は引上げ法で育成したCeIrSi3単結晶インゴットと、In フラックス法で育成したCeRhIn5単結晶である。

  • Recent Advances in Ce-Based Heavy-Fermion Superconductivity and Fermi Surface Properties, R.Settai, T.Takeuchi and Y.Ōnuki: J.Phys. Soc. Jpn. 76 (2007) 051003(1-32).
図2 CeIrSi3とCeRhIn5の単結晶
3)超ウラン化合物の電子状態の研究

 ネプツニウム化合物はほとんど全てが磁性秩序を持つ磁性体である。何とかバンド理論との正確な対比が可能な常磁性体を見つけたく、常磁性体のNpGe3という化合物にたどり着いた。良質な単結晶試料が育成され、ドハース・ファンアルフェン効果の実験結果を山上浩志(京都産業大学)のバンド理論とつきあわせたところ、5ƒ 電子は遍歴していることが明らかになり、重い電子状態の実態も分かった。また、ネプツニウム化合物NpPd5Al2で初めて超伝導(TSC =5K)を発見した。結晶構造は正方晶であり、CeRhIn5, NpRhGa5などの正方晶に似ている。上部臨界磁場はH//[100]で37kOe, [001]で143kOe と大きい。超ウランのプルトニウム化合物では、PuIn3で世界初のドハース・ファンアルフェン効果の検出に成功し、バンド理論とつき合わせたところ5ƒ 電子が遍歴していることが分かった。

  • Itinerant 5ƒ Electrons and the Fermi Surface Properties in an Enhanced Pauli Paramagnet NpGe3, D.Aoki, H. Yamagami, Y.Homma, Y.Shiokawa, E.Yamamoto, A. Nakamura, Y.Haga, R.Settai and Y.Ōnuki: J.Phys. Soc. Jpn. 74 (2005) 2149-2152.
  • First Observation of de Haas-van Alphen Effect in PuIn3, Y.Haga, D.Aoki, H.Yamagami, T.D.Matsuda, K.Nakajima, Y.Arai, E.Yamamoto, A.Nakamura, Y.Homma, Y.Shiokawa and Y.Onuki : J.Phys. Soc. Jpn. 74 (2005) 2889-2892.
  • Unconventional Heavy-Fermion Superconductivity of a New Transuranium Compound NpPd5Al2, D.Aoki, Y.Haga, T. D.Matsuda, N.Tateiwa, S.Ikeda, Y.Homma, H.Sakai, Y. Shiokawa, E.Yamamoto, A.Nakamura, R.Settai and Y.Onuki: J.Phys. Soc. Jpn. 76 (2007) 063701(1-4).

 また、本COE と日本学術振興会二国間交流事業の援助の下で、日独セミナー「強相関電子系の協力量子現象:電子状態の量子相転移・次元性・新奇な相の出現」(平成18年8月26日〜8月29日、彦根、参加者 ドイツ側19名、日本側20名)を開催した。

2.教育活動

 この5年間で大学院博士後期課程の大学院生6名(内ベトナムからの留学生1名)が理学博士の学位を取得した。

  • 池田修悟/“Fermi Surface and Magnetic Properties of 5ƒ-itinerant UTGa5 (T:Transition metal) Compounds”(平成17年3月)
  • 宍戸寛明/“Fermi Surface Properties of CeCoIn5 and CeRhIn5 at Ambient and Under High Pressure”(平成17年3月)
  • 植田泰輝/“Characteristic Electronic States and the Pressure Effect in Magnetic Compounds:Ce2RhIn8, CeRhGe and CePtAl”(平成18年3月)
  • 奥田悠介/“Various 4ƒ-Electronic States in Ce3Sn7 and CeIrSi3”(平成19年3月)
  • Nguyen Van Hieu/“Single Crystal Growth and Magnetic Properties of RRhIn5 Compounds (R:rare Earths)”(平成19年3月)
  • 河井友也/“Split Fermi Surface Properties and Superconductivity in the Non-centrosymmetric Crystal Structure”(平成20年3月予定)

3.特記事項

 平成15年から日本物理学会の欧文誌J.Phys. Soc. Jpnが導入したJPSJ 注目論文に8編の論文が選ばれ、表彰を受けた。また、日本物理学会第13回論文賞も受賞する。

 また、J.Phys. Soc. Jpn.から最近の重い電子系の超伝導の進展を特集した「Frontiers of Novel Superconductivity in Heavy Fermion Compounds 」( eds. Y.Ōnuki and Y. Kitaoka, 2007)を編集した。