大阪大学21世紀COEプログラム 究極と統合の新しい基礎科学 実績報告書

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事業推進担当者の活動報告 > 高原  文郎 理学研究科宇宙地球科学専攻・教授
高原 文郎 理学研究科宇宙地球科学専攻・教授 写真

宇宙物理学の理論的研究

高原  文郎  理学研究科宇宙地球科学専攻・教授

役割/事業推進担当

1.研究活動

 宇宙物理学における未解決の大問題である相対論的ジェットの形成機構および非熱的高エネルギー粒子の加速機構の研究を軸に、高エネルギー宇宙物理学の理論的研究を多方面で進め、この5年間で21編の原著論文を発表した。

1)相対論的アウトフロー形成のウィーンファイアボールモデル

 活動銀河中心核などにみられる相対論的ジェットの形成機構について、大質量ブラックホールへの降積プラズマ中で形成された大量の電子陽電子対が相対論的速度で膨張するというウィーンファイアボールモデルを提唱し、その形成過程における微視的物理過程を解明し、さらにコリメーション機構の検討を進めている。背景プラズマ中で生成された電子陽電子対流体の流出の数値シミュレーションを行い、モデルの妥当性を確認した。さらに、高い運動学的光度とより大きな相対論的速度を実現する条件の検討を続けている。

  • Energy and Momentum Transfer via Coulomb Frictions in Relativistic Two Fluids, K.Asano, S.Iwamoto & F.Takahara, Ap.J.S., 168, 268−276 (2007)
  • Generation of a Fireball in AGN Hot Plasmas, K.Asano &F.Takahara, Ap.J., 655, 762−768 (2007)
  • Wien Fireball Model of Relativistic Outflows in Active Galactic Nuclei, S.Iwamoto & F.Takahara, ApJ, 601, 78−89(2004)
2)ブレーザーの多周波放射モデルとジェットの物理的性質

 相対論的ジェットの物理的性質をブレーザーの多周波同時観測や高角度分解能の観測によって明らかにする研究を系統的に進めている。中心核のブレーザー輻射領域では、磁場よりも電子のエネルギー密度が卓越していることなどを明らかにして、ジェットの形成モデルに強い制限を与えた。また、力学モデルと輻射スペクトルの性質を結合して考察することによりジェットの組成に制限をつける研究などを行っている。

 電波銀河Cen-A など空間分解されたジェットの多周波スペクトルをもとに、そこでのX線放射機構や粒子加速機構の検討を行っている。定量的な検討のためにはジェットの内部構造の影響を考慮する必要があることが明らかとなった。

ウィーンファイアボールの空間構造。
横軸はシュワルトシルト半径で規格化した動径座標である。
上図は実線が速度を破線が電子質量で規格化した温度を表わす。
中図は粒子数の構成(実線は電子陽電子、破線は光子)を示す。
数はエディントン光度で規格化した光度(実線は電子陽電子の運動学的光度、
点線はそのうち静止質量部分の寄与、破線は光子を含む全光度)を示す。
  • On Invisible Plasma Content in Radio-Loud AGNs: The Case of TeV Blazar Markarian 421, M.Kino & F.Takahara, MNRAS, 383, 713−719 (2008)
  • A Structured Leptonic Jet Model of the “Orphan” TeV Gamma-Ray Flares in TeV Blazars, M.Kusunose & F. Takahara, Ap.J., 651, 113−119 (2006)
  • The X-Ray Jet in Centaurus A: Clues to the Jet Structure and Particle Acceleration, J.Kataoka, F.Takahara, et al., Ap.J., 641, 158−168 (2006)
  • Constraining the Emission Properties of TeV Blazar H1426+428 by the Synchrotron Self-Compton Model, T. Kato, M.Kusunose & F.Takahara, Ap.J., 638, 653−658 (2006)
  • Compton Scattering in the Klein-Nishina Regime Revisited, M.Kusunose & F.Takahara, ApJ, 621, 285-290 (2005)
  • Constraints on the energetics and plasma composition of relativistic jets in FR II sources, M.Kino & F.Takahara, MNRAS, 349, 336−346 (2004)
  • The Electron Spectrum in 3C 279 and the Observed Emission Spectrum, M.Kusunose, F.Takahara & T.Kato, ApJ, 592, L5−L8 (2003)
3)無衝突衝撃波の粒子加熱・加速過程

 超新星残骸や電波銀河では相対論的なエネルギーを持った電子が大量に存在している。このような非熱的粒子は無衝突衝撃波において加速されていると考えられるが、質量の小さい電子はイオンのつくる構造中をまず断熱的に運動するので、その加熱・加速機構には多くの問題がある。これまで反射イオンによる2流体不安定で励起される静電ポテンシャルに捕捉された電子が運動電場によって強く加速されるというサーフィン加速が注目されてきたが、全て1次元で研究されてきた。われわれは、2流体不安定が斜め伝播のモードも同様に励起することに着目して2次元シミュレーションを行い、サーフィン加速は全く起こらないことを示した。これで電子加速問題は振り出しに戻ったことになる。現在、これまで無視されることが多かった多次元性の効果を解析的また数値的に追求している。

  • Absence of Electron Surfing Acceleration in a Two-Dimensional Simulation, Y.Ohira & F.Takahara, ApJ.L., 661, L171−L174 (2007)
  • TeV γ-rays from Old Supernova Remnants, R.Yamazaki,F.Takahara et al., MNRAS, 371, 1975−1982 (2006)
  • Probabilistic description of the first-order Fermi acceleration in shock waves: time-dependent solution by the singleparticle approach, T.N.Kato & F.Takahara, MNRAS, 342, 639−650 (2003)
4)パルサーモデルとガンマ線バースト

 パルサーの極冠モデルについて、非相対論的陽子の逆流があれば、これまで困難であった加速電場の遮蔽機構が成功すること、陽子と電子陽電子対の間の二流体不安定によりコヒーレントな電波放射をうまく説明できることを示した。また、ガンマ線バーストなどの研究も行った。

  • Coherent Curvature Radiation and Proton Counterflow in the Pulsar Magnetosphere, K.Asano & F.Takahara, ApJ, 630, L53−L56 (2005)
  • Giant Flare of SGR 1806-20 from a Relativistic Jet, R.Yamazaki, K.Ioka, F.Takahara & N.Shibazaki, PASJ, 57, L11−L15 (2005)
  • Electric field screening by a proton counterflow in the pulsar polar cap, K.Asano & F.Takahara, A&A, 428, 139−148 (2004)
  • Electrostatic instability in electron-positron pairs injected in an external electric field, K.Asano & F.Takahara, A&A, 416, 1139−1147 (2004)
  • Photon Emission in a Cascade from Relativistic Protons Initiated by Residual Thermal Photons in Gamma-Ray Bursts, K.Asano & F.Takahara, PASJ, 55, 433−444 (2003)

2.教育活動

 この5年間で大学院博士後期課程の大学院生6名が理学博士の学位を取得した。

  • 佐合紀親/“Self-force regularization of a particle orbiting a Schwarzscild black hole”(平成16年3月)
  • 松宮 慎/“Reconstructing the primordial spectrum from CMB anisotropy”(平成16年3月)
  • 藤田龍一/“Gravitational waves from a particle orbiting a Kerr black hole”(平成18年3月)
  • 南辻真人/“Kaluza-Klein Modes in Braneworld Cosmology”(平成18年3月)
  • 小合徳幸/“Reconstructing the Primordial Spectrum with CMB Temperature and Polarization”(平成18年3月)
  • 馬塲一晴/“Curvaton scenario in a theory with two dilatons coupled to the scalar curvature”(平成18年3月)