大阪大学21世紀COEプログラム 究極と統合の新しい基礎科学 実績報告書

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事業推進担当者の活動報告 > 松田  准一 理学研究科宇宙地球科学専攻・教授
松田 准一 理学研究科宇宙地球科学専攻・教授 写真

X線検出技術開発・宇宙の解明

松田  准一  理学研究科宇宙地球科学専攻・教授

役割/新カリキュラム「現代社会と科学技術」担当

1.研究活動

 太陽系における地球などの惑星、月や隕石物質中に含まれる元素の同位体比の精密測定を通して、太陽系の初期形成史とその進化についての研究を行っている。希ガスは化学的に安定であり、かつ揮発性が高いことから、太陽系で起こったさまざまな過程に対して、良いトレーサーとなり、その同位体比変動から、その過程を逆に推察することができる。

1)隕石中の希ガスの研究

 隕石中の希ガスの主要担体であるQは、その正体が明らかにされておらず謎に包まれている。この希ガスの担体Qの希ガスおよび軽元素の同位体比について研究を行ってきた。アレンデ隕石から純粋に物理的な手法により分離された希がス濃縮成分について、コロイドに成りやすさ、密度の相違などによる分離を行い、どのようなフラクションにQやプリソーラーダイヤモンドが濃縮しているかを調べた。その結果、密度が1.65±0.04g/cm3のフラクションに濃縮していることを見つけた。このフラクションについて、ラマン分光や透過電顕などで詳細に研究した。その後、同じ技法を普通コンドライトのHコンドライトに適用して実験を行ない、そのフラクションの分離に成功し、希ガス測定を行ったが、希ガスは入っていない事がわかった。また、アレンデと同じ炭素質隕石のマーチソンでも試したが、成功しないことがわかった。このことが隕石中の希ガスの担体であるQの性質に関係しているのかも知れない。

 また、隕石中の様々な希ガス成分(宇宙線照射成分、放射壊変成分、Q、前駆太陽系成分)などについて、隕石の水質変成がどのような影響を与えるなどを調べた。その結果、水質変成により、宇宙線照射成分、放射壊変成分などは壊され、また、Qも影響を受けることがわかった。

図1 Qがもっとも濃縮していたアレンデ隕石中のフラクションで、
グラファイト物質と思われる。スケールバーは1μm
  • An attempt to separate Q from the Allende meteorite by physical methods, S.Amari, S.Zaizen and J.Matsuda: Geochim. Cosmochim. Acta 67 (2003), 4665−4677.
2)テクタイトの成因

 テクタイトについては、Muong Nong タイプという、通常のテクタイトとは異なるものについて希ガス測定を行い、その形成時の高度推定から、最高でも高度10−25kmまでしか持ちあげられなかったことを示した。さらにネオンの濃縮は通常のテクタイトと同様であるが、アルゴンの含有量が高いことから、Ne/Ar 比が低くなることや年代が0.7Maであることなどがわかった。

 また、中国産のテクタイトについて、Ne の濃縮を調べ、シリケイトの化学組成と関係することなどを見つけた。ネオンの濃縮は、ガラスのシリカ量や非架橋酸素と相関があることがわかり、このことからテクタイトには、メルト中の自由体積が大きいことにより、ネオンの濃縮が生じることがわかった。

  • Noble gas study of Muong Nong-type tektites and its implication, S.Mizote, T.Matsumoto, J.Matsuda and C. Koeberl: Meteorit. Planet. Sci. 38 (2003) 747−758.
  • Distribution of noble gases in Chinese tektites: implication for neon solubility in natural glasses, D.Pinit T.Matsumoto, J.Matsuda and Z.Fang: Meteorit. Planet. Sci. 39 (2004), 87−96.
3)鉄隕石の研究

 鉄隕石の包有物中の希ガス研究から鉄隕石の成因、また実験時における新しいるつぼの開発などについても論文を発表した。また、鉄隕石Canyon Diablo のグラファイト包有物について、Qの存在を確認して、新たな希ガス成分(El Taco Xe)があることを見つけた。

 プレソーラー粒子が担っている希ガスのHL 成分とQ の比は炭素質隕石の値よりも低いことから、このCanyon Diablo 鉄隕石は、500−600℃の熱変成を受けたことがわかった。また、新たな希ガス成分(El Taco Xe)はIAB 鉄隕石に普遍的に見られることも確立された。

  • Primordial noble gases in a graphite-metal inclusion form the Canyon Diablo IAB iron meteorite and their implications, J.Matsuda, M.Namba, T.Maruoka, T.Matsumoto and G. Kurat: Meteorit. Planet. Sci. 40 (2005), 431−443.
4)地球物質の希ガス

 ハワイ沖海底火山玄武岩試料、フィンランド産の太古代カーボナタイトや、造山帯かんらん岩などについての分析を行った。その一環として、西イタリアのカンラン岩の希ガス論文を発表した。

  • Noble gases in the Finero phlogopite-peridotites, western Italian Alps, T.Matsumoto T.,T.Morishita, J.Matsuda, T. Fujioka, M.Takebe, K.Yamamoto and S.Arai: Earth Planet. Sci. Lett. 238 (2005), 130−145.
5)炭素同位体比研究

 安定同位体のマスの立ち上げを行い、ダイヤモンド、グラファイト、フラーレンなどについての燃焼実験の結果を論文にまとめた。ダイヤモンド、フラーレンは完全燃焼するが、グラファイトは完全燃焼しないことがわかった。また、衝撃で合成したダイヤモンドとグラファイトについて、炭素の同位体比を測定し、合成時の圧力効果などについて詳しく調べた。

  • Carbon isotope analysis for inorganic samples by a continuous flow mass spectrometer, T.Fujimoto, C.Nishimura. H.Omori and J.Matsuda: J.Mass Specrom. Soc. Jpn. 52 (2004), 196−204.
  • Carbon isotope fractionation between graphite and diamond during shock experiments, T.Maruoka, C.Koeberl, J.Matsuda and Y.Syono: Meteorit. Planet. Sci. 38 (2003), 1255−1262.

2.教育活動

 大学院博士課程の大学院生は2名が理学博士の学位を取得した(1人は2007年度末取得予定)。また、ハンガリーからの学生を博士課程後期に大学院生として迎えた。

  • 西村智佳子/“The study of noble gas isotopes in the Sait aubin iron meteorite”(平成19年度3月)
  • 宮川千絵/“On the noble gas solubility in terrestrial material under high pressures”(平成20年度3月予定)

3.特記事項

 小惑星(9229)が「Matsuda」と命名された(平成15年度)。また、国際隕石学会のフェローに選ばれ、平成18年度国立大学法人大阪大学教育・研究功績賞を受賞した(平成18年度)。大学院生(ジョージツッポン)が、台湾で開かれた国際学会ICGC(8th Inernational Conference on Gas Geochemistry)で“Young Scientist Award, 2nd place”を受賞した。