CERNの(全周27km)の大型加速器LHCにおいて、温度に換算して10京度に相当する超高エネルギーで陽子を衝突させることで得られたり得られなかったりした結果が、特に昨年発見されたヒッグス粒子が、素粒子論の将来にどのようなインパクトをもたらすかについて議論します。
宇宙空間では、さまざまな波長の電磁波(光)が飛び交っていますが、真空紫外線(VUV)や軟X線(SX)と呼ばれる光は、大気によって吸収されるため、地上に到達できません。その光は物質の性質(物性)の起源である電子構造を観測するのに適しており、人類はシンクロトロン光と呼ばれる加速器を使って発生させたVUV/SX光を使って、物質の電子構造を手に取るように観測することが可能になりました。この談話会では、物性の起源と固体中の電子構造の関係と、電子構造の直接観測が物性研究の発展にどのように寄与してきたかを紹介します。
我々の住む宇宙は137億年前のビッグバンで始まりました。何もかもが一様な超高温度のプラズマは、膨張により温度が下がり、銀河が誕生し、星が生まれ、いろいろなエネルギーや物質の移動に伴い、多様な現在の姿に進化しています。宇宙を研究するには、可視光に限らず電波やX/γ線など広範囲の波長領域での観測が必要です。その中で、X線を使えば宇宙にあるほとんどのバリオンを観測できますし、それを基にダークマタ―の分布も判ります。現在、日本のX線天文グループは、2015年打上を目指してASTRO-H衛星の準備を進めています。この衛星は、日本を中心に、世界の叡智を集め、最新の技術を取り込み、これまでにない性能を持ちます。観測対象は、太陽系の天体から、星、超新星やその残骸、高温ガス、銀河団、AGNなどほぼすべての天体を含みます。そこには、普通の物質から、超高温、ブラックホールなどいろいろな状態があります。ASTRO-Hとそれによって目指すサイエンスを紹介します。
14機器による月の全球リモートセンシングを行った「かぐや」、1kmに満たない小惑星を観察してサンプルを持ち帰った「はやぶさ」、2つの成功した、しかし対照的な探査によって、日本の太陽系探査は、世界的にも認知されるものとなった。現在は、金星探査機「あかつき」が軌道再投入を目指しており、欧州と協力して水星探査機「ベッピコロンボ」を2年後に打上予定である。これまでの日本の太陽系探査の目的は、太陽系(および天体の)起源・進化の解明や、比較惑星学(大気現象の違い、磁気圏の違い)であった。今は日本が関わる探査においても、「生命」「水」というものが大きなキーワードになっている。その方向性の上で、「はやぶさ2」(C型小惑星探査)、「JUICE」(木星系探査)などが動き出している。
超伝導は、電気抵抗の消失という劇的な現象によって多くの研究者を魅了する。1986年に発見された銅酸化物高温超伝導は、それまで20K台であった転移温度の世界記録を一気に150K超にまで引き上げた、一大ブレークスルーであった。さらに2008年には鉄ヒ素系化合物において50Kを超える新たな高温超伝導体が発見され、大きな関心を集めている。通常の超伝導体においては電子・フォノン相互作用がその起源であるのに対して、これらの高温超伝導体では、電子間相互作用が重要な役割を果たしていると考えられ、いわゆる「電子相関」の研究も飛躍的に進みつつある。講演では超伝導の基礎的事項について概説した後、これらの高温超伝導体にみられる多様性と普遍性について述べる。
宇宙誕生後最初の1秒間に何が起こったか----- 実はこの問いに対する答えはほとんど分かっていません。そしてこの問いは、「宇宙に『物質』は存在するのに『反物質』がほとんどないのは何故なのか?宇宙は何で出来ているのか?宇宙の主成分である暗黒物質・暗黒エネルギーとは何なのか?それらはいつ、どのように作られたのか?これらを説明する基本的な理論は何か?」といった根源的な問題を含んでいます。こうした謎に迫る素粒子論の研究について、最近発見されたヒッグス粒子などにも触れつつ、紹介したいと思います。
非平衡系は「閉じていない」ことにより、非常に多彩な現象を生み出す。実は、世の中にみられるほとんどすべての現象は、非平衡下での現象なのである。また、逆にその多彩さが非平衡系の研究を難しくする。非平衡系固有の個別性のため一般論が成立しにくいのである。本講演では、そのような非平衡系でみられる物理の一端を紹介したい。
重力波は一般相対性理論が予言する時空の歪みの波であり、ブラックホールや超新星爆発といった天体現象や宇宙初期インフレーション等から発生すると予想されています。重力波の観測は一般相対論の強い重力場での検証であるとともに、天体内部や宇宙初期を探るプローブとしても期待されています。こうした天体起源の重力波の直接検出を目指して、km級基線長のレーザー干渉計計画が稼働中です。日本では、現在、KAGRA検出器が岐阜県神岡鉱山に建設中です。今回は、日本のKAGRA実験の建設状況の紹介を中心に、重力波とその検出原理におついてお話しします。また、重力波を放出する天体は、同時にγ線、可視光赤外線、ニュートリノなどの放射源でもあると期待されています。重力波とこれらの手段の同時観測や、フォローアップ観測(追跡観測)により、天体現象を解明することが期待されています。こららの観測で期待されている重力波天体の物理についても紹介いたします。
規則的に配列したナノ空間に閉じ込めた相関電子系の作製とその物性の実験的研究について紹介します。
・ゼオライト結晶のナノ空間にアルカリ金属クラスターを作製する
・ナノクラスターにおける新しい電子状態と「スーパーアトム」描像
・「s電子にはあるまじき」磁気秩序の発現(元素の個性を超越した物質設計)
また、中性子やミュオン、放射光などの「量子ビーム」を用いた物性実験手法についても紹介します。
超弦理論は、この世界の全ての物質と力を統合的に記述できる究極理論の候補である。そこで醸成された様々な数学公式は、多様な物理系に応用できることが分かって来た。中性子星の中心には何があるのか?という問いへの挑戦を、超弦理論で旅してみよう。
恒星や星の進化は、宇宙に広がる磁場に支配される事が観測から分かっています。ところが星周ダストの多くは、磁気活性が弱いとされる反磁性体・常磁性体であり、現状では磁場の作用の様子がよく分かっていません。最近のμg実験の結果、宇宙ではこれらの物質も強磁性体に準じた力学運動を起こしうる事が明らかになりました。そのような研究結果から、初期太陽系の固体粒子が、磁場の作用を、どの程度受けたかを考えます。
この20年の天文観測により、我々の宇宙観は劇的に変化した。かつては実証的サイエンスとして議論できなかった宇宙論が、実際の観測データに基づいて理論から制限を加える事ができるようになったのである。その結果、現在宇宙の各構成要素のエネルギー配分に10%以下の精度で制限をつけることができ、現在の宇宙がダークエネルギーとダークマタ―で支配されている事が明らかになった。その標準ビッグバン宇宙モデルに基づいて、宇宙全体の構造形成、銀河形成、星形成史も次第に明らかになって来ている。本講義では、このような現代宇宙論の歴史から紐解き、スパコンを用いた最新の構造形成シミュレーションの結果までを議論する。美しいビームをたくさんお見せします!
近年盛んに研究されている強相関電子系について、遷移金属酸化物の巨大磁気抵抗効果などの代表的な現象を紹介し、基本原理について説明する。さらに、分子性物質や、磁性強誘電体などの巨大応答物性について、最近の研究内容の紹介も行う。