地球をはじめ、火星や水星といった地球型惑星の内部構造は、一様に中心 に鉄合金の核があり、その周りを岩石のマントルが覆っている。ところが惑星に よって、核とマントルとの量比や組成は異なる可能性がある。この惑星内部の構 造や組成の問題について、惑星内部の高温高圧環境での物性測定から迫ってみる。
身の回りの物質を構成している元素は、宇宙の誕生(ビッグバン)直後から現在にかけて、また、星の誕生から終焉までの星の一生の中で、原子核の反応や崩壊を通して合成されてきました。ミクロな世界の原子核の情報は、マクロな世界の宇宙の現状や歴史を知る上で非常に重要です。原子核の研究の最前線を紹介し、宇宙での元素の合成への関わりを紹介します。
携帯電話やパソコンなど、私たちの身のまわりには、高度なエレクトロニクス技術を駆使した、たくさんの電子機器があります。エレクトロニクスとは「電子をあやつる」技術のことです。私たちはどこまで電子を制御できるのでしょうか?量子力学とエレクトロニクスの歴史を振り返ってみると、私たち人類が、どのように電子を制御する技術を身につけてきたのか、よく分かります。さらに、近年、ナノテクノロジーの発展にともなって、極小の電子回路を用いた新しいエレクトロニクス「人工量子系」の研究が進んでいます。例えば、電子を一個ずつ操る技術や、電子を波として扱う技術、量子コンピュータの基本素子などが開発されています。今回の講義では、量子力学とエレクトロニクスの歴史、ナノテクノロジー、そして最新の研究成果までをご紹介します。
私たちの身の回りの物質はクォークという素粒子から構成されていると考えられています。このクォークを記述する量子色力学の基礎と、それをコンピュータを用いた数値計算で解く研究について紹介します。
1.宇宙線の起源を探る、宇宙衝撃波の物理と国際協同研究の現状の紹介(坂和)
2.10年以内に完成予定の超高強度大型レーザーによる「真空の崩壊」と,それによる相対論的電子・陽電子プラズマの生成。反物質プラズマと高エネルギー宇宙(高部)
グラフェンは炭素の一形態であり、グラファイト1原子層だけから成る薄膜である。2004年に発見されたこの物質は、厚さ数オングストロームの極めて薄い物質でありながら、高い電気伝導性や機械的強靭性を誇り、未来の物質材料としても注目される。
グラフェンがただの薄い金属と異なっている点は、電子の運動が「質量ゼロのディラック方程式」と呼ばれる特別な方程式で記述されるという点である。これにより通常の金属や半導体とは異なった興味深い物性現象が生じる。 この談話会ではグラフェンの様々な物性(電気伝導、光吸収、磁場効果など)に焦点を当て、基本的な量子力学の知識を用いて解説する。
『原子核』は皆さんが身近に感じる存在ではないかもしれませんが、私達が住むこの世界の成り立ちは原子核の性質と密接に関係しています。陽子と中性子を材料にしてこの原子核を作り上げる力は核力と呼ばれる『強い相互作用』の一種で、その起源を初めて明らかにしたのが湯川秀樹博士の中間子論です。その後、様々な実験的・理論的研究が発展してきましたが、いまだに謎の部分も多く残されています。ところで、陽子と中性子以外も材料に加え、『自然界では滅多にお目にかからない原子核』を作ろうという試みが近年盛んに行われています。この試みは、「まだ誰も見たことがないものを創ってみよう」という素朴な動機だけでなく、やや逆説的ですが「核力の起源をより深く理解しよう」という大きな目標を持っています。この講義では、その試みの中でも、『ストレンジネス』を持つ粒子を用いた実験的研究について詳しくお話ししたいと思います。
太陽以外の恒星を回る惑星(系外惑星)は1995年に初めて発見されてから、これまでに1800個以上見つかっている。本講演では、これら系外惑星がどのような方法で発見されたのか、またそれからどのような惑星だったのかを紹介する。そして、それらから分かりつつある系外惑星の形成シナリオについて解説する。
電気抵抗が消える超伝導は、極低温の物理現象である。それがマイナス140度という高温(!)で起きた。これが社会に大きな衝撃を与えたのはなぜか?
“More is different.”(by P.W. Anderson)という言葉は、凝縮系物理の本質を表している。多数電子が集まることの意味やその効果は何か?
高温超伝導の謎はどこまで解けたのか?
エキゾチック超伝導体にはどんな特徴があるのか?
たくさんの“なぜ”についてお話しします。ついでに高温超伝導体実物に触って“超伝導”を体感してもらいます。
重力は古くから知られている力でありながら、未だに謎が多い力です。Einsteinの一般相対性理論によって、重力は時空そのものの力学であることが明らかになりました。一方で量子論は特にミクロの世界を記述する理論として成功した理論です。量子論を考えると古典的には連続的であったもの、例えば角運動量などが離散的になります。では時空の力学である重力の量子論を考えると、古典的には連続である時空が離散的になったりするでしょうか?今回は時空の離散的構造について、弦理論における最近の発展をお話しします。
質量分析という計測手法を用いると物質の精密な質量を知ることができ、そこから得られる多様な情報は様々な分野で活用されています。本講義では、我々の研究室で開発しているマルチターン飛行時間型質量分析を軸とした最新の応用研究の事例を中心として、様々な質量分析の研究について紹介します。
今月17日で阪神淡路大震災発生から20年が経過しました。その間、東日本大震災や長野地震など多くの地震被害が発生しております。また、近い将来に大阪平野での内陸型地震や東海−東南海−南海地震の発生が危惧されています。このような状況の中、現在、どのような地震研究・減災対応が進められているのか、その最先端を紹介しつつ、物理と化学を駆使して活断層の動きを探る研究の意義を説明します。