2015(H27)年度
先端物理学・宇宙地球科学輪講

日時

2学期 金曜日4時限(14:40〜16:10)

場所

理学部D501大講義室

出席

毎回、回覧される出席表に自筆で署名してください

レポートについて

提出回数

下の日程表に示す2〜3回の講義の組につき1つのレポートを提出する。提出するレポートの数は合計5つ。

内容

興味や関心を持った講義について、その内容をまとめる。さらに、内容に関連してさらに自分で調べたこと、あるいは疑問に思ったことを書いてもよい。

形式

A4紙で2〜4枚程度。1枚は不可。
1ページ目の初めに
・講師名、表題
 (改行して)
・学科、学年、学籍番号、氏名
を明記し、続けて同じページからレポート内容を書いてください。

提出先

理学部H棟4階物理事務室(H408)の扉の横の「鍵返却・レポート提出用メールボックス」

講義日程とレポート提出期限

レポート 提出期間:2015/10/26〜10/30

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2015.10.2

ガイダンス
阿久津泰弘(物理学専攻)

2015.10.16

強磁場物性科学へのいざない
萩原政幸(理学研究科附属先端強磁場科学研究センター)

物質の性質(物性)を明らかにするには、外から何らかの刺激を与えて、それに対する応答を調べる(観測)必要があります。外からの刺激、つまり、外部パラメーターとして磁場や圧力などがあり、現代の物性科学はこのパラメーター領域の拡大と共に発展してきたと言えます。我々のセンターでは通常の実験施設では発生させることのできない強い(高い)磁場を発生させることのできる実験施設を有しています。この強い磁場を用いると物性を“調べる”のみならず、“変える”ことができるため、時に面白い現象が現れることがあります。実験施設の紹介と磁場によって現れる面白い現象に関してお話をします。
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2015.10.23

小天体探査から探る太陽系の進化
佐々木晶(宇宙地球科学専攻)

太陽系小天体とは、小惑星、彗星、太陽系外縁天体(カイパーべルト天体)、衛星などの総称である。小天体には過去の太陽系進化の歴史が残っており、探査機による観測やサンプル回収により、新しい知見が得られている。 はやぶさ(小惑星)、かぐや(月)計画の成功により、日本は太陽系探査で、重要な役割を果たしはじめている。はやぶさは、大きさ数100mの天体イトカワの、変化に富む姿を明らかにした。昨年打ち上げられたはやぶさ2は、有機物や含水鉱物が存在すると考えられている小惑星1999JU3 (リュウグウ)からサンプルを回収する。また、火星の衛星フォボスのサンプル回収計画も動きだしている。
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レポート 提出期間:2015/11/9〜11/13

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2015.10.30

物質の中に現れる「質量ゼロの電子」
大坪嘉之(生命機能研究科 光物性研究室)

固体物質の電気的・磁気的な性質(電気抵抗、比熱、磁化率、etc...)は,電子のバンド構造に支配されています。通常このような電子は,有限の値を持つ有効質量を持っていますが,1原子の厚さの炭素シートであるグラフェンやトポロジカル絶縁体の表面では,ニュートリノのような「質量がゼロの電子」があらわれ,次世代の超高速デバイスへの応用も期待されています。ここでは,バンド理論から質量ゼロの起源,および,物質のバンド構造を観測する実験手法である角度分解光電子分光法を紹介します。
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2015.11.6

超冷中性子とEDM(電気双極子モーメント)
松多健策(物理学専攻)

超低速(<5 m/s)の中性子(超冷中性子UCN)を物質容器や重力で閉じ込め、磁気共鳴から、電気分極(EDM)を観測する。  EDMは時間反転対称性の破れを引き起こし、宇宙での物質創成のかぎを握る。
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レポート 提出期間:2015/11/30〜12/4

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2015.11.13

理論的物質設計の可能性~超伝導と熱電効果~
黒木和彦(物理学専攻)

固体の中では多くの電子が複雑に運動しており、様々な 興味深い電子物性を生み出す。 1023個オーダーの電子 たちの振る舞いを理論的に理解することは容易でない。 ましてや、実験に先んじて理論先行で物性を予想するこ とは大変困難なことに思われる。しかし、近年の理論手法 と計算技術・資源の進歩により、新しい超伝導などの予想 なども不可能ではない時代が到来しつつある。本講演では、 講演者が主たる研究対象としている超伝導や熱電効果を 例に、既存の実験の理解と、そこからさらに踏み込んだ 理論物質設計の可能性について述べる。
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2015.11.20

ガラス・ジャミング系の物理
吉野元(サイバーメディアセンター)

ガラス・ジャミング系の物性を微視的レベルから第一原理的に理解 することを目指した統計力学的アプローチを紹介します。「窓ガラス」は言うまでもなく、結晶のように硬く、液体のように乱れた状態であるガラスは、コロイドや高分子などソフトマターから、固体金属にまで広く見られる物質のあり方の一つです。その密度を高めて行くとジャミング状態が得られます。これまで取りつく島のないように思われたガラス・ジャミング状態の物性について、液体の統計力学と、スピングラスなどランダム系の統計力学のアイディアと技術が融合して、理論の可能性が開けてきています。
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2015.11.27

惑星最深部の解明を目指して
近藤忠(宇宙地球科学専攻)

地球深部で起こっていることを自由に掘って見ることは100年後でも難しいでしょう。しかし、地球のマントルや核といった極限環境を実験室で再現し、そこでの物質の挙動を調べる研究は、近年大きく進步しています。本談話会では、地球や惑星・衛星の深部領域に対する最新の観測結果や、様々な高圧実験法を駆使した我々の惑星深部研究の結果を紹介します。
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レポート 提出期間:2016/1/4〜8

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2015.12.4

X線でみる宇宙
林田清(宇宙地球科学専攻)

宇宙には、様々な波長の電磁波を放射する天体があり、目で見える光=可視光による観測だけでは、宇宙の限られた一面しかとらえることができない。波長の短い電磁波であるX線は、数百万度から数億度のプラズマから放射される。本講演では、代表的なX線天体、ブラックホール、銀河団、超新星残骸をとりあげ、X線観測から何がわかったのか、さらに何を知りたいのかを解説する。あわせて、2015年度内に打ち上げ予定のASTRO-H衛星の概要と、期待される成果を紹介する。
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2015.12.11

固体粒子の磁性と惑星形成
植田千秋(宇宙地球科学専攻)

惑星の形成は、宇宙空間の磁場の作用を受けて進む事が知られています。ただし出発材料である固体粒子の磁性については、粒子の多くが反磁性であるため、その作用が検討される事はありませんでした。しかし最近私たちが行ったμℊ実験の結果、宇宙環境では反磁性粒子も強磁性粒子に準じた磁気運動をする事が明らかになりました。現在の太陽系は、惑星ごとに構成物質の大きな差異がありますが、その一因が初期に粒子の受けた磁気的作用にある可能性を、上記の結果に基づいて考察します。 
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2015.12.18

初期宇宙論と量子重力
窪田高弘(物理学専攻・全学教育推進構)

1990年代以降、COBE, WMAP、 PLANCKといった観測計画の実施により、宇宙背景輻射の揺らぎのデータが極めて精度の高いものになってきた。これらのデータにより宇宙に存在する暗黒物質や暗黒エネルギーの割合が明らかにされ、現代の物理学、とりわけ素粒子論の分野に重要な研究課題を提出している。この講演では、素粒子論と宇宙論にまたがる最近の話題と、その背景を解説する。
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レポート 提出期間:2016/2/1〜2/5

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2016.1.8

実験で探る、新しい素粒子物理
山中卓(物理学専攻)

物質が何からできているかを突き詰めていくと、それ以上分解できない粒子があります。これを素粒子と呼びます。このように物質を構成する粒子の他に、素粒子の間に働く力を媒介する素粒子もあります。これらの素粒子は標準理論というもので統一的に理解されていますが、標準理論だけでは、宇宙になぜ物質があるのかを説明できません。標準理論を越える新しい物理があるはずで、そうした新しい素粒子物理を探るためにどのような実験がされているのか、実験の現場を紹介します。
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2016.1.22

「計算機の中に星を作る」
富田賢吾(宇宙地球科学専攻)

数値シミュレーションは理論・観測と並ぶ宇宙物理学研究の重要な柱である。特に宇宙物理学は物理学の他分野に比べ実験が困難で観測にも再現性が必ずしもないため、数値シミュレーションの占める役割は大きい。ここでは星形成過程の研究を例に取り、これまでどのように原始星やその周囲の原始惑星系円盤の形成や進化の研究が発展してきたか、そして惑星形成まで含めた統一的理論モデルの構築に向けた展望について説明する。また近年アタカマ大型ミリ波サブミリ波望遠鏡(ALMA)の稼働により原始星や原始惑星系円盤形成の現場が直接観測できるようになり、大きく進展しつつある観測的研究の最先端も紹介する。合わせて宇宙進化グループで行われている宇宙規模での構造形成、銀河形成や高エネルギー宇宙物理学の研究についても紹介したい。
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2016.1.29

クォークの海を、彷徨う。
〜「ゆらぎ」を通して覗く、クォーク・グルオン・プラズマの世界〜

北沢正清(物理学専攻)

クォークと、グルオン。 それは、素粒子標準模型の基本構成要素でありながら、 単体では存在することのできない奇妙な粒子たち。 ところが、ビッグバンの直後、超高温の宇宙には、 これらの粒子が単独で動き回ることのできる世界が広がっていました。「クォーク・グルオン・プラズマ」。 そう呼ばれるこの物質状態を、我々人類は現在、 地上の実験で、ほんの一瞬だけ、作り出すことができます。こうして解き放たれたクォークたちが単独で彷徨う痕跡を、 観測量の「ゆらぎ」の中に見出す最新の研究のこと、 そして、未知の物質状態に思いを巡らし彷徨い続ける、 ある研究者の思索のことを、紹介します。
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輪講世話人
阿久津泰弘 H627, acts あっと phys どっと sci.osaka-u.ac.jp
(TA) 吉岡希裕、井上智裕