2020(R2)年度
先端物理学・宇宙地球科学輪講

日時

秋・冬学期 金曜日4時限(15:10〜16:40)

場所

理学部D501大講義室

出席・レポート

毎回、ミニレポートを書いて提出してください。

注意事項

対面講義を行います。ただし、新型コロナウィルス感染症の感染拡大状況によってはオンライン講義に切り替える可能性もあります。

講義日程

第1回

2020.10.2

ガイダンス
吉田 斉(物理学専攻)

第2回

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2020.10.9

 大型レーザーで宇宙の謎を実験室で研究する:レーザー宇宙物理学 
坂和 洋一(レーザー科学研究所)

概要:我々は、大阪大学の激光XII号をはじめ、世界各国の大型レーザーを用いて、宇宙で観測されているプラズマ物理現象の素過程を実験室で解明しようという、「レーザー宇宙物理学」の研究を行っています。その1つのテーマとして、超新星残骸や地球磁気圏で観測されている、粒子間のクーロン衝突がほとんど無視できる無衝突プラズマ中での衝撃波、「無衝突衝撃波」に関する研究を行っています。「無衝突衝撃波」は高エネルギーの荷電粒子である宇宙線の生成に重要な役割りを果たしていると考えられています。
講演では、このようなレーザー宇宙物理の詳細を紹介します。
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第3回

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2020.10.16

 太陽系外惑星系のアーキテクチャ 
増田 賢人(宇宙地球科学専攻)

概要:太陽以外の恒星を公転する惑星(太陽系外惑星)が最初に発見されてから20年以上が経ち、現在では4000を超える系外惑星が知られている。これらの発見は、惑星系が銀河系においてありふれた存在であることを示した一方で、太陽系の惑星とはかけ離れた物理的性質や軌道をもつ惑星が数多く存在することも明らかにした。本講演では、地上からの分光観測およびNASAのケプラー探査機による宇宙からの測光観測に基づく成果を中心に、系外惑星系の存在頻度や軌道構造の多様性について天文観測から得られた知見を紹介する。
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第4回

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2020.10.23

 光で見る物性の起源と光で作る新物性 
木村 真一(生命機能研究科)

概要:共に20世紀半ばに発明されたシンクロトロン光 (放射光)とレーザーは,物質の性質(物性)の起源を調べ,よりよい性能を得るために,重要な役割を果たしてきました。最近では,物性物理の教科書にあるバンド構造が角度分解光電子分光で実際に観測できるようになっただけでなく,パルスレーザーを使って物性の変化(相転移)を引き起こす「光誘起相転移」が可能になってきており,光を用いた物性研究が新たな展開を見せています。
講演では,我々の最近の研究成果であるトポロジカル近藤絶縁体の電子構造研究と硫化サマリウムの光誘起相転移を例として,最近の光物性研究について紹介します。
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第5回

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2020.10.30

固いモノを集めて柔らかい物理を作る
桂木 洋光(宇宙地球科学専攻)

概要:自然界は様々な階層構造により構成され,物理学は極大スケール・極小スケールなどの極限で成り立つ自然法則に注目することが多い.しかし,我々の身近なスケールの階層においても豊かで多彩な物理現象が見られることがしばしばある.特に,多数の構成要素が集まることにより,集団として固体とも流体ともつかない複雑な挙動を示す物理状態を作り出すことが様々な系で知られており,ソフトマターと呼ばれている.様々な階層構造が作り出すソフトマターの柔らかな物理は多種多様な地球惑星現象,産業応用とも深く関わっている.講演の中では,ソフトマターの中でも特に固体粒子群で構成される粉体の基礎物理としての面白さ,不思議さ,階層構造の中での位置付け,地球惑星科学的応用などについて概説する.
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第6回

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2020.11.6

 ヒッグス物理が拓く素粒子新理論の地平 
柳生 慶(物理学専攻)

概要:物質の究極的な構造は何か、それを支配する法則は何か、宇宙はどのようにして始まったのか。これらの質問に答えることが素粒子物理の目指すところです。 2012年にLHC実験でヒッグス粒子が発見され、素粒子の質量起源の謎の解明に大きな一歩を踏み出しました。またこれにより、素粒子標準理論の予言する最後の未発見粒子が発見されたことになり、標準理論は完成されました。しかしながら、標準理論には重大な綻びがあることが知られており、究極的な理論であるとはまだまだ言うことができません。本講演では、ヒッグス粒子の物理が標準理論を超える新物理を探る「鍵」になっているという可能性を、最新の理論研究の成果を紹介しながら明らかにしていきたいと思います。
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第7回

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2020.11.13

 電子正孔系の物理 
浅野 建一(全学教育推進機構)

概要:強い光を照射した半導体中では、同数の電子と正孔が多数共存する系(電子-正孔系)が実現される。この系が示す多彩な振る舞いについて紹介したい。
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第8回

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2020.11.27

 地球形成期の実験的再現 
近藤 忠(宇宙地球科学専攻)

概要:地球や惑星の形成期には、天体が必ず経験すると思われるいくつかの重要な素過程があります。その中でも天体の成長過程における衝突現象と、形成後の天体内部で起こる高温高圧力下の分化過程は特に興味深いと考えています。我々は天体間の衝突で起こる物質の破壊・溶融・相転移、また天体内部の層形成や元素が各層に分配していく過程を、大型のレーザーや高圧力・高温発生装置を用いて実験室で再現しています。その実験で得られた試料を詳細に分析することによって、惑星の形成過程を物質科学的に調べる研究を行っています。本談話会では、これらの最新の研究結果について紹介します。
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第9回

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2020.12.4

 ブラックホールを通して紐解く宇宙の歴史 
井上 芳幸(宇宙地球科学専攻)

概要:今年のノーベル物理学賞は、「巨大ブラックホールの研究」に対して授与されました。そもそも巨大ブラックホールとは何でしょう?なぜ存在するのでしょう?さらに、長い宇宙の歴史の中で、巨大ブラックホールと銀河が共に成長してきたことも近年の研究で明らかになりつつあります。本講演では、最新の理論・観測からわかってきた巨大ブラックホールの姿を紹介しつつ、宇宙における巨大ブラックホールの役割や銀河との関係についてお話したいと思います。
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第10回

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2020.12.11

 超伝導体開発の最前線 
工藤 一貴(物理学専攻)

概要:超伝導体は、電気抵抗がゼロになる驚異的な物質です。約100年前、水銀において超伝導が発見されました。その後、銅酸化物超伝導体の発見により、従来モデルにおける臨界温度の限界が打破され、鉄系超伝導体の発見により、高温超伝導の遍在性が示されました。最近は、超高圧下で観測された水素化物の高温超伝導が注目されています。この談話会では、このような世界の超伝導研究の潮流を概説すると共に、私たちが進めている遷移金属化合物の超伝導物質開発についてお話しします。これまでに報告した新超伝導体の開発戦略を紹介し、超伝導と物質開発の面白さをお伝えするつもりです。
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第11回

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2020.12.18

 社会に役立つ量子アプリケーション技術-加速器が未来を変える- 
福田 光宏(核物理研究センター)

概要加速器は,イオンや電子などの電荷を持った粒子を電場によるクーロン力を利用して高いエネルギーまで加速する装置です。目に見えない原子核や素粒子の世界を探求する量子ビームを生み出す道具として加速器は大変重要な役目を果たしています。一方で,加速器は,がんの診断や治療に役立てられたり,私たちの暮らしを陰で支えている産業機器の一つとして放射線や放射性同位体(RI)を供給したり,今や社会に無くてはならない存在になっています。基礎研究から産業応用に至るまで,幅広く活用されている加速器ですが,より安心で豊かな未来社会の実現に求められる量子アプリケーション技術とそれを支える加速器研究の最前線についてご紹介致します。
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第12回

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2020.12.25

 だれが原子核をみたか 
緒方 一介(核物理研究センター)

概要:原子核は決して目で見ることができません。また、原子核が住んでいる世界は量子力学に支配されていますから、その振る舞いを確定することもできません。では、私たちは原子核の何を、どうやって語ることができるのでしょうか?
講義では、このような疑問から出発して、これまでに明らかになった原子核の性質について概観します。特に、大阪大学核物理研究センターや理化学研究所の加速器を用いた最新の研究成果が、原子核物理学の常識をどう書き換えたかを紹介したいと思います。
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第13回

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2021.1.8

 界面の物理学-物質の可能性を追求する- 
松野 丈夫(物理学専攻)

概要:我々の身近にある物質の多様な性質(物性)は、電子という一種類の素粒子により実現しています。すなわち、物質はマクロな物性とミクロな電子を結ぶ舞台であり、物理学の魅力的な対象です。中でも、二つの異なる物質が接する境界=「界面」は、単一の物質では実現できない豊かな物性の舞台となっています。原子レベルで制御された界面で電子のふるまいを調べることで、物理学の新たな世界が見えてきます。
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第14回

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2021.1.22

 光で拓く超高エネルギー粒子加速;レーザープラズマ加速研究の最前線 
細貝 知直(産業科学研究所)

概要:今日の科学技術、産業、医療の発展に大きく貢献している粒子加速器ですが、高エネルギー化と大強度化の要求に伴い巨大化の一途を辿っています。膨大な資金と立地が必要とされる巨大加速器に対する小型化への要求は高く、高強度レーザーパルスとプラズマとの相互作用で励起される超高電場を用いて電子を加速するレーザー航跡場電子加速には高エネルギー電子加速器の飛躍的な小型化が期待されています。その加速電場強度は従来高周波加速器の1000倍を越えた?100 GV/m(ギガボルト/メートル)にも達し、原理的には、GeV(ギガ電子ボルト)級の巨大な超高エネルギー加速でさえも卓上サイズで実現可能です。研究開始当初目標のGeV級の加速や準単色ビーム発生の原理実証は達成され加速機構としての高いポテンシャルが既に示されています。加速長30cm足らずでで8GeVもの電子加速に成功したとの報告もあります。また、近年、レーザー航跡場加速を電子ビームドライバーとする卓上X線自由電子レーザーの実現を目標に掲げた研究プロジェクトが我が国を始め世界各国で始動しています。今回は、レーザープラズマ粒子加速研究の最前線に関する話題を提供します。
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輪講世話人
吉田 斉 H410, sei あっと phys.sci.osaka-u.ac.jp
横田 勝一郎 F421, yokota あっと ess どっと sci.osaka-u.ac.jp
(TA) 名古屋 雄大

過去の先端物理学・宇宙地球科学輪講HP
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